「中高生のための憲法教室」(伊藤真)

憲法について考えるための第一歩

「中高生のための憲法教室」(伊藤真)岩波ジュニア新書

数年前まで
憲法改正論議が盛んでした。
もっと議論が盛んに
ならなければいけなかったのですが、
2014年の「憲法解釈変更」という
政権の裏技が炸裂し、
尻すぼみになってしまいました。
「憲法を変えなくても
権力の思いのままに
何でもできる」ということが
現実になりつつあります。

さて、それでも…、
いや、だからこそ、
私たちは憲法について
学んでおくべきではないでしょうか。

本書は憲法について考えるための
第一歩となる一冊です。
私たちが生活する中で
生じる疑問について、
憲法を基準に考え、
読者とともに何が正しいのかを
追求するというスタンスで
書き進められているからです。
そして、
本書はこうした知の探求を、
7時限の授業に見立てて
構成しています。

第1時限
「憲法の理念」ってなんだろう

筆者は最初の章から
日本国憲法の平和理念と
軍事力の否定に切り込みます。

第2時限
自分の幸せを自分で決める権利とは

ここで筆者は人権について
わかりやすく説明し、
改憲論議での注意点について
述べています。

第3時限
「自由」と「義務」について考える

「表現の自由」から始まり、
「納税の義務」「教科書検定」など、
民主主義のあり方について
説明しています。

第4時限
憲法改正は必要なのだろうか

ここが本書の肝の部分です。
なぜ「改憲」議論が起きたのか、
そして憲法改正とは
どんなことなのか、
憲法改正によって
何が変わるのかを
懇切丁寧に解説しています。

第5時限
国民としての主体性とは何か

裁判における
憲法の位置付けについて触れ、
被害者参加制度や裁判員制度など、
司法に市民が関わることの
重要性について述べています。

第6時限
平和な社会がつくるもの

ここで再び、平和憲法を
改正することの危険性について
訴えています。

そして最後の
第7時限 憲法のもつ力
憲法が民主主義を
どれだけ支えているかを説き、
憲法改正を否定しています。

学校の授業も
1日に7時間目まであると、
かなりくたびれます。
本書も読み応え十分で、
読了するまで
様々なことを考えさせられます。
ぜひ中学生高校生に、
そして大人にも薦めたい一冊です。

※本書を読んだ後に、
 同じ著者による
 「現代語訳日本国憲法」
 (ちくま新書)を読むと
 理解が深まるものと考えます。

※本書のように、
 思想が関わる書物については、
 読み手の立場によって、
 評価が違ってくると思います。
 いろいろな書評を見ると、
 「思想が偏りすぎ」という指摘が
 見受けられます。
 しかし、偏っていない
 「真ん中」などあり
 得ないのではないでしょうか。
 それよりも、
 一般人には取っつきにくい憲法を、
 中高生にまでわかるように
 解説してある点を、
 私は最大限に
 評価したいと考えます。

(2019.3.18)

2件のコメント

  1. ヤフーブログのyahanです^^
    この本はむしろ大人が読むべき本のようです
    平和憲法が確立されまでの長い苦闘の歴史がありましたからね
    その有り難さを現代の大人たちは忘れているのでは…と考えられます
    これからもこんな本があるのだと…ご紹介されることを楽しみにしています
    ただコメントするのにヤフーとは違って結構手間取ります ^^;

    1. こんばんは。コメントありがとうございます。
      憲法についてはいろいろな議論があって
      しかるべきなのだと思います。
      しかし、流れを見ていると、議論が脇に寄せられ、
      憲法改正の流れを
      政権が強引に作ろうとしているようにしか
      見えないのです。
      私たち大人もまた
      しっかり考えなければならない問題だと思います。

      コメントの仕方が
      Yahoo!ブログよりも確かに面倒です。
      このカスタマイズについては
      現在研究中ですが、
      どうにもならないような感じです。
      このあたりが自前のサイトの弱点です。

      これからもよろしくお願いします。

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